代表取締役社長
川﨑 浩司
(株)伊藤木材設計室
代表取締役
伊藤 啓二様
ギノウスの新社屋を建てる際に伊藤さんには大変お世話になりました。
実は、このプロジェクトの間にはいろいろ人が入れ替わったりして、なかなか想いが実現できるイメージが湧かなかったのですが、伊藤さんは私の想いや考えを引き出してくださって、徐々に輪郭がはっきりしていきました。
ありがとうございます。私にとっても思い入れのあるプロジェクトでした。
私が参画した時には、着工の時期も完成予定日も決まっており、非常にタイトなスケジュールでした。ですが、現場監督や関係者みんなでアイデアを出し合って盛り上がりながらプロジェクトを進めることができて良かったと思っています。
今思い返せば、嫌がられてもおかしくない進め方だったと思います。それでも私の想いを実現して頂いた伊藤さんには感謝しかありません。
実は最初のオーダーはそこまで多くなかったんですよ。しかし、私の経験上何十年も残る建物ですから、ここで妥協すると絶対に後悔することが目に見えていました。なので、私の方が決まったプランをひっくり返して新しいアプローチを提案したりしていました。
今回のプロジェクトで、モノづくりにかかわる職人さんが良い空間にいないのはどうなのかという想いがずっとありました。良い環境で仕事をしているからこそ職人としての自覚を持つべき、という社員教育的な要素もプロジェクトを通じて考えていました。
自分たちが日々働く環境はモチベーションの部分でも重要だと思っています。だからこそ最後までこだわり抜きたかった。しかし、そのこだわりが強すぎたがゆえに左官工事を請けてくださる業者さんがいなくなって結局当社の職人でやることになりました。
ギノウスさんの団結力って本当にすごいなと思いました。普通だったら間に合わないだろうという状況だったんです。左官というのは継ぎ目を作ったらダメなんですよ。人材不足もあり大きな壁を作ることが困難になってきている中で、これだけの漆喰や土壁壁面を連続で作りあげたことは本当にすごいと思いました。続々と職人さんが参加して、一気に仕上げる様子は私も初めて拝見しました。
今回、鉄骨造で揺れるALC壁を仕上げるにあたって実はいろいろ実験しました。
左官仕上げにおいて「割れ」は最も不細工なんですよ。そこで当社はガラスネットを全面に入れて仕上げました。その結果、割れないということがわかりました。この技術は実体験から自信をもって、現場に提案していけると確信できたので、そういう意味ではとても良い実験ができました。
新社屋完成という嬉しい余韻の中で、現在は西武バス株式会社様と協議して敷地内にバス停を作るプロジェクトを行っています。社屋の前の交差点はとても狭く渋滞しやすい場所なのですが、日常的にトラックなどの出入りが激しいので、近隣住民の方に迷惑をかけずに喜んでいただけることがないかと考えたのです。
そうですね。快適にすごせる待合所を提供したいというお話にバス会社の方も事例がないと驚かれていましたが、川﨑社長は社屋計画の当初から地域の皆さんへの影響ということを大切な基準にされているようでした。行政と真摯に向き合っておられましたが、どのような想いから行動に移していらっしゃるのですか?
私は、社会奉仕の理念を大事にしています。社会のことを誰かがやらなければならないと思っています。そうしないと環境は良くならないんですね。私が尊敬する人物の一人に「大原孫三郎」という人がいます。明治末期の若い頃から、岡山県の倉敷を拠点とし、倉敷紡績(現、クラレ)の経営の他、中国銀行、中国電力、大原美術会館等、社会奉仕の理念で地域の発展に尽力した方で、私も少しでも近づきたいという想いをもつようになりました。
三芳スマートフルインター化に伴い、当社の前の交差点の渋滞解消の為に道路拡張を当社から埼玉県三芳町に申し出ました。
なかなかできないことだと思いますが、ギノウスの「人を喜ばす」という理念がしっかりと反映されていますね。
少し話が遡りますが、白い社屋の外観について、当初は黒で考えていました。ですが社長から「交差点に面しているので威圧するような建物は避けたい」というお話があり、景観に合うように白に変更して植栽を植え、優しい雰囲気を作り出しました。
伊藤さんのすごいところは、全てをつなげてデザインされている状態を創り出す力だと思います。そして、その考えの奥底にはモノづくりに対しての哲学があります。ここも伊藤さんを尊敬するところです。
ありがとうございます。モノづくりって、最終的に最適化されていることが大事だと思うんです。この工程は大変だからやめておこうという誰かの都合ではなく、想像できる最高の形にするためであれば、プロジェクトの途中であっても白紙に戻して再構築できる社長の勇気は非常に素晴らしかったです。